ほんといろいろ。

読書とただ日常は日記か何か

不条理な世界をユーモアたっぷりに描く一條次郎という作家さんに出会えた喜び

去年(2018年)の末。いつものごとく本屋さんをぶらぶらしていたら、ある小説の帯が目にはいった。僕の好きな作家のひとりである伊坂幸太郎さんによるその紹介文に惹かれて手に取る。聞いたことのない作家さん。しかし、最初の1ページ目にさっと目を通しただけで、気づいたらその小説を手にレジへと向かっていた。これは間違いなく面白い小説だと、その時点でわかってしまったのだ。まあちょっと大げさに書いたけど(笑)、僕の一條次郎さんとの出会いは大体そんな感じだった。



是非ご紹介したい。

一條次郎さんについて

1974(昭和49)年生まれ。山形大学人文学部卒業。福島県在住。2015(平成27)年、『レプリカたちの夜』で新潮ミステリー大賞受賞。他の著書に『ざんねんなスパイ』がある。 (新潮社HPより)


とりあえず同じ東北人ということで、勝手に親近感をもつ。笑。


それはさておき、一條次郎さんが世に出した作品はまだ2作しかない。その2作というのが、『レプリカたちの夜』『ざんねんなスパイ』。僕が最初に読んだのは、レプリカ〜の文庫版で、つまり伊坂幸太郎さんが書いた帯はこれに付いていたのである。


家へ帰り、『レプリカたちの夜』を読み終えた僕は、すぐさま本屋さんへ行き、もう一作である『ざんねんなスパイ』を購入する。いや、すぐさまは言いすぎか。数日後だったかもしれない。


そして、『ざんねんなスパイ』も一瞬にして読了。


まあ何が言いたいよかというと、とにもかくにも、二作とも最高に面白かったのだ、ということである。


ちょっとあらすじを含め、感じたことなどつらつらと。

一條次郎さんの極上な作品たち

『レプリカたちの夜』

動物レプリカ工場に勤める往本がシロクマを目撃したのは、夜中の十二時すぎだった。絶滅したはずの本物か、産業スパイか。「シロクマを殺せ」と工場長に命じられた往本は、混沌と不条理の世界に迷い込む。卓越したユーモアと圧倒的筆力で描き出すデヴィッド・リンチ的世界観。選考会を騒然とさせた新潮ミステリー大賞受賞作。「わかりませんよ。何があってもおかしくはない世の中ですから。」 (新潮社HPより)


なんというか、とりあえずわけがわからなかったという印象が残る。ミステリー大賞をとったという前知識があったというのもあり、最初に現れたシロクマが何なのかとか、この工場で何が起きているのかという謎が、いずれ明かされていくのだろうなと、最初はそう思いながら読んでいた。


しかし、読んでいくとこれはそんな話ではないのだと気付く。はじめに「わけがわからなかった」と書いたけれど、そこが重要で、この『レプリカたちの夜』という小説は、自分の存在や記憶がいかに曖昧であやふやなものなのかっていうのを教えてくれる小説なのだ。つまりわからないということがわかる。「わけがわからない」っていうのは、この世界に対する自然な解釈だってことに気づく。いや、その気づきさえ、本当に自分で気づいたことなのかわからない。自分は本当に自分なのか。やがて自己は消滅する。っていうね。わけがわからないでしょ?笑。でもね、この感じが気持ちいいんだよ。迷い込んでいく感じが。気づいたらのめり込んでる。


そういえば、ライターの長瀬海さんによるこの小説の書評で、「ポール・オースターの初期三部作を思い出した」と書いてあったのを読んだ時、「ああ、確かにそうだ」と思った。自分を見失っていくやつ。そりゃ好きになるわ。文体はかなり違うけど、きっとポール・オースターの小説を好きな人は、きっと『レプリカたちの夜』も好きになるに違いない。


ja.m.wikipedia.org


と、なんとなく面倒くさくて読みづらい雰囲気なのかと思う内容なんだけど、そんなことは全然ない。とっても読みやすいのである。その要素のひとつに登場人物たちのクセがつよいという事が言える。詳しく書きたいところだけれども、これは実際に読んで出会ってほしいのでやめておく。僕は、その中でも特に「うみみずさん」がお気に入りだとだけ言っておこう。

レプリカたちの夜 (新潮文庫)

レプリカたちの夜 (新潮文庫)

『ざんねんなスパイ』

わたしはニホーン国のエリートスパイ。だが、どこでしくじったのだろう。市長を暗殺しにこの街へやってきたのに、そのかれと友だちになってしまった……。キリストを名乗る突然の来訪者、年寄りの賢いロバ、泥棒稼業を営む隣家のマダムに、巨大化したリス。妙ちきりんで癖になる人(動)物たちが次々に織り成す、一大狂騒曲。 (新潮社HPより)

これだけで、もう面白そうである。もちろん期待を裏切ることなく、超絶面白い


主人公はおじいちゃんスパイなんだけれども、もうとにかく理不尽極まりない出来事に、否応なしにじゃんじゃん巻き込まれていく。めちゃくちゃですよ。もはや理解不能。


とまあ、そんなふうにこちらも、『レプリカたちの夜』と同じように、不条理な世界を描いているけども、そこはひとまず脇に置いて、もし一言でこの小説を表現するならば、「ダンス小説」だと言えるんじゃないかと思う。ちょっと極端な感想かもしれない。笑。


登場人物たちが、とにかくみな踊る。音楽に乗せられ自然と身体が動き出す。そして、ダンスで仲良くなる。これこそ人間の本質である。さらに一條次郎さんの音楽への造詣の深さと愛情が素晴らしい。というか詳しすぎてちょっとついていけない。笑。ダンスのステップの種類がたくさん出てきて、調べながら読んだもの。しかしその辺がまた僕の心をくすぐったのである。


『音楽』が好きな人は是非読むべし。


もちろんこれはひとつの極論的な読み方で、そんなの関係なく、素晴らしいユーモアセンスと不条理世界を単純に楽しめる小説なので、是非読んでみてほしい。

ざんねんなスパイ

ざんねんなスパイ

最後に

ここまで書いてきてアレだけど、こんなブログより伊坂幸太郎さんとの対談を読んだら、面白さがもっと伝わるんじゃないかと思わざるを得ない。笑。

www.bookbang.jp

もうあれです、書きたいことがたくさんありすぎてまとめられられない(文章力が皆無)ということである(言い訳)。あとでもうひと記事ふた記事書くかもしれない。

というか早く次の作品が読みたい。次はどんなお話を書いてくれるのか。それを楽しみに仕事頑張ろ。



ほんと一條次郎さんの小説に出会えてよかった。


みな読むべし。