失踪した友人を探してインド各地を旅する主人公、彼の前に現われる幻想と瞑想に充ちた世界。インドの深層をなす事物や人物にふれる内面の旅行記とも言うべきこのミステリー仕立ての小説を読み進むうちに読者はインドの夜の帳の中に誘い込まれてしまう。イタリア文学の鬼才が描く12の夜の物語。 (白水社HPより)
このアントニオ・タブッキの『インド夜想曲』というガイドブックを手に、いつかインドを旅するのもいいかもしれない。何処かにいるはずの「僕」のアトマンを探して。
「それじゃ、アトマンってなんだ」
僕の無智に少年はにっこりした。
「The soul.個人のたましいです」
『インド夜想曲』(白水Uブックス)p93
アトマン(アートマン/ātman)とは、意識の最も内側にある個の根源のことである。これ自身が認識をするものであって、僕らがそれを認識することはできない。「真我」というものである。
つまりいくら探したところで見つかるわけはないのである。ブラフマン(宇宙の根源原理)との融合は叶わない。
それでも人は、自分というものを探したがる。探さずにはいられないのかもしれない。その手段のひとつが文学である。
「ある過去を、あるいは、なにかの答えを探しているのかも知れない。ずっとまえにわからなかったことを理解しようとしているのかも知れない。僕を探すことで、自分自身を探していると言えばいいのだろうか。本というものは、よくそんなふうにして書かれる。それが文学だろう」 『インド夜想曲』(白水Uブックス)p143
この幻想的なガイドブックに沿って想像の海を旅すれば、アトマンは見つけることはできないかもしれないが、何かを得ることはできるのかも知れない。
アントニオ・タブッキの作品はこの『インド夜想曲』が初めてだったけれども、これはハマりそうな予感(ハマったという実感)がする。実際的に。

- 作者: アントニオタブッキ,Antonio Tabucchi,須賀敦子
- 出版社/メーカー: 白水社
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因みに映画化もされてる。観たい。
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