ほんといろいろ

本と音楽と日々の愚行録

僕の弟子はお爺さん

「オレがもう少し若ければあなたの弟子になったのにな」

冗談だったかもしれない。しかし、そのお爺さんが僕のことを気に入ってくれている雰囲気はすでに感じ取っていたので、多分思いのほか本気の台詞なのではないかと僕は思った。なのでそれはなかなか、というかとても嬉しい瞬間だった。

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彼は、僕がクロスやクッションフロアを貼る作業を、後ろに立ちジーっと見ていて、時折「なるほど。。」などとつぶやいてみたり、なぜそこはそうするのだ?などと質問してみたり、まあ正直少々鬱陶しく感じたりはしていたのだけれども(内緒だよ)、今思えば、なるほどすでに弟子であったわけである。

そんな弟子との奇妙な共同作業も無事終わり、道具を片付けていると、

「もう作業は終わりなの?じゃあ、お別れ、ですね」

と、彼が少し寂しそうな表情をしているのを見て僕は、確かにもう二度とこの人に会うことはないのかもしれないなと思いつつも、また何かあればいつでも呼んでください、とだけ言った。

その何か。後日それはあったが、呼ばれてはいない。

もしかしたら僕が貼ったクロスやクッションフロアは水に浸かってしまったかもしれない。ラグビーワールドカップの試合が中止になり、カナダ代表の選手たちがボランティア活動をしてくれたのは岩手県釜石市。あのお爺さんの家の付近が冠水している様子をテレビは映し出していた。

弟子は今どうしているだろうか。今度行った時に立ち寄ってみようと思う。