則本でなんとか連敗ストップ。とりあえずオールスター前に止まってよかったよかった。おかえり則本。
川上未映子の新作が出るということで、ちょっと読み返している。ガサごそと本棚を漁ると、『ヘブン』や『すべて真夜中の恋人たち』、『乳と卵』などが出てくる。あ、結構川上未映子好きだったんだ僕は、と人ごとのように思ったところで、とりあえず『すべて〜』を読み始める。しかし、思いもよらぬところから『ウィステリアと三人の女たち』という短編集が出てきて、そちらへシフト。一緒にポールオースターの『幻影の書』と『ミスターヴァーティゴ』も出てきて、嬉しい誤算(結構前から探していた)。なぜかビニール袋に入って、ベランダの棚に置かれていたのである。

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さて、この短編集には表題作含め4編収められているのだけれども、しおりが挟まれている位置から考えると、おそらく(というか間違いなく)2つ目の「シャンデリア」という短編の途中までしか読んでいなかった模様。乱読ばかりしているとこうなる。ということでその「シャンデリア」から始め、今度は全部一気に読んだ。
相変わらずの繊細さ、そしてそこに潜む黒々しい毒気は健在である。
やはり川上未映子の小説は、男性にこそ読まれるべきだといつも思う。しかし、どうも女性読者が多いような気がする。読めば少しは女性の複雑で不可解な心理(偏見かもしれない)が、わかるような気にさせられるんだけれど。つまり、わかりそうで結局よくわからないということがよくわかるというような、そういう複雑で繊細な心理を上手く描くのが川上未映子だということであって、このようなわけのわからない文章(この文章)を書かせてしまうように男性を混乱させるのが女性なのだということである。
それにしても、「阿部和重と川上未映子」というある意味最強の夫婦(どちらも好きな作家という自分の身勝手な理由で)から産まれた子供がどのような人間になるのか気になる。この二人を両親に持つというのも大変そうではあるけれど、刺激的だろう。
『ウィステリアと三人の女たち』という短編には、女性が子供を産むということに対する意識というか感情や心理みたいなものが、とても細かに描かれている。子供ができない女性。産まれて間もなく子供を亡くしてしまった女性。女性を愛する女性。
それらをメタフィクション的に、かつ幻想的な雰囲気で、しかもそれを短編で上手いことやっちゃった川上未映子、素晴らしい。
最新作『夏物語』もそういった女性と子供の物語(ざっくり)のようだ。川上未映子の小説の根幹にはいつもあることだけれども、それはつまり「人間」とは、という問いでもある。きっとまた考えさせられる小説であるに違いない。さらに「乳と卵」の登場人物が再びということらしいので、その辺も楽しみである。
買う前にもう一回「乳と卵」読んどこ。

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